FOCUS 非財務資本の強化

非財務資本の相乗効果でイノベーションを起こし、
3つの価値を向上

非財務資本の相乗効果でイノベーションを起こし、3つの価値を向上

ノウハウやIPといった知的資本、グループ内・顧客・パートナーとの共創による社会・関係資本、そしてラーニングカルチャーを基盤にした人的資本。
ベネッセグループは、蓄積してきたこれらの非財務資本をさまざまな取り組みを通じてさらに強化しています。
各資本の相乗効果で数々のイノベーションを起こし、新たな商品やサービスを創出し続けることで、「社会」「顧客」「経済」の3つの価値向上に取り組んでいます。

「ミライシード」の進化

DX人財の育成によってデジタル商品・サービスを進化

ベネッセコーポレーションは、全国の小中学校にタブレット学習支援ソフト「ミライシード」を提供しています。このミライシードは、2020年以降、コロナ禍による休校やGIGAスクール構想の前倒しから利用者数が大きく増加しています。そこで、導入校のICT担当の先生に詳細な情報を提供するファンサイトを開設したほか、オンラインセミナーを実施するなどタッチポイントを強化。各地の先生の多様な声を活かして、日々の授業で使いやすいUI・UXの改善や、AIを活用した個別最適な学習に対応した改訂などサービスの拡充を図るとともに、機能の開発やサービスの運用を担うDX人財の確保・育成を強化しています。
こうした取り組みの結果、(公社)企業情報化協会が主催する2021年度(第39回)IT賞においてミライシードが「IT賞(顧客・事業機能領域)」を受賞しました。ベネッセグループが学校教育の現場を長く支援するなかで蓄積した知見・ノウハウをもとに、指導や学習のさまざまな面で活用できるミライシードを開発し、生徒の学習や教務の支援など教育現場におけるDXに貢献している点が評価されました。

ミライシード

「Udemy Business」の普及拡大

法人向けサービスの拡充を通じて顧客層をさらに拡大

ベネッセグループは、大学・社会人に向けた新たな商品・サービスの提供を通じて、社会・関係資本の強化に取り組んでいます。
その一つである「Udemy」は、世界中の「教えたい人」と「学びたい人」をオンラインでつなぐ動画学習プラットフォームサービスで、ベネッセコーポレーションはUdemyの日本における独占的事業パートナーとしてサービスの普及を図っています。また、Udemyで公開されている講座のなかから日本の利用者向けに厳選した日本語・英語の約7,300講座を、サブスクリプションで利用できる法人向けサービス「UdemyBusiness」も展開。現時点(2022年6月末)で国内800社以上、日経225採用企業の50%で採用され、2021年度からは三重県でも行政職員のIT知識・スキルの向上に活用されるなど、企業や自治体の人財育成に貢献しています。
また、このUdemyは当社グループの社員も利用しており、Udemy Businessの導入企業のみならず、当社グループの人的資本の強化にも寄与しています。今後も、Udemyを進化させることで、当社グループの顧客層、そして社員の能力向上を進めていきます。

Udemy Business

Udemy Business

「マジ神AI」の開発

人とテクノロジーの融合によりご入居者のQOL向上を目指す

ベネッセスタイルケアでは、全国の高齢者向けホームにおけるご入居者のQOL向上を目指し、ベネッセホールディングスのDX推進部門と連携して「マジ神AI」の開発を進めています。「マジ神」とは社内資格制度の通称で、高い専門性と実践力を持つ介護の「匠」のことであり、これまでに延べ190名超のスタッフが認定されています。マジ神AIは、マジ神の気づきや行動を教師データとして開発しています。高い専門性を持つスタッフの無形のノウハウを教師データにすることで、ご入居者のQOL向上につながる要素を定量化。人とテクノロジーの融合により、どのスタッフでもマジ神に近い、質の高いケアを提供できるようになることを目指しています。
同社は、2022年3月に第1号ベネッセ版センシングホームとして「グランダ四谷」をオープン。2023年度までにさらに55拠点をセンシングホーム化する予定です。これらのホームでは、「睡眠センサー」や「排泄センサー」など複数のセンサーを居室に設置し、センサーが収集した情報を集約してご入居者のお身体の状態を可視化。そのデータとマジ神のノウハウによって、QOL最重視のサービス品質を実現するAIソリューションを開発する計画です。
ベネッセグループの介護領域におけるAIの活用は、介護現場の業務効率化にとどまらず、介護人材不足という深刻な社会課題に対し、人財育成による介護の質向上、さらには業界全体の活性化にもつながる、グループの重要なDX施策の一つとして、今後も取り組みを強化していく方針です。

マジ神AIの活用

マジ神AIの活用
宮下 ゆかり
ベネッセホールディングス
データソリューション部
データサイエンティスト
宮下 ゆかり

ベネッセの介護をさらに進化させるソリューションを、現場の介護職員に理解してもらい、実際に使ってもらえるように要件化していくプロセスが難しく、また、やりがいのあるポイントです。現場で活躍しているマジ神の枝松さんの思考プロセスをヒアリングしながら、二人三脚で要件検討と開発を推進してきました。これからも人による気づきを継続的にシステムに反映し、それぞれの現場職員がより良い判断を支援できるような機能を充実させていくことで、人とテクノロジーの相乗効果を生み出していきたいと思います。

枝松 裕子
ベネッセスタイルケア
専門性開発部
介護職(マジ神)
枝松 裕子

ベネッセの介護人財の強みは、事業理念に掲げている「その方らしさに、深く寄りそう。」を実現するために、ご入居者お一人おひとり違う「その方らしさ」を捉える方法、そして「深く寄りそう」を実現するフレームワークを体系的に学んでいることです。
今後はさらに、センサーが収集した情報と「マジ神AI」を活用することで、体調の変化などに気づくだけではなく、よりいっそう「その方らしさ」の実現ができるようになっていきます。

ベネッセ教育総合研究所

研究知見創出のスピードと品質を高め研究知見を社会や教育現場、そして自社事業へ還元
〜デジタルを活用したよりよい学びとは〜

ベネッセ教育総合研究所は、ベネッセグループの複数の研究部門を統合し、2013年に誕生した社内シンクタンクです。研究活動の基盤となる多くの人財を擁しており、子育てや教育環境を総合的に捉え、乳幼児から大学生、社会人、保護者、先生など幅広い範囲を対象に、教育分野において多角的な調査・研究を行っています。
事業を取り巻く環境が目まぐるしく変化するなか、研究テーマも日々複雑化・学際化しています。同研究所は、事業変化のスピードに柔軟に対応していくため、従来の学問別研究機能から、課題別研究機能へと改革し、「人の発達・成長と学びの成果研究」を進化させています。その一環として、2022年4月より、研究所内に「教育イノベーションセンター」を新設。「デジタルを活用したより良い学び」をテーマにした社会・グループ内への情報発信とともに、教育事業領域におけるDXをサポートする機能の強化に取り組んでいます。
具体的には、進研ゼミ事業や学校事業の担当者、ブランドや広報の担当者が参加する「情報戦略推進会議」を毎月開催し、主に小学校から高校領域のデジタルを活用した学びに関する知見や国内外の先進事例、研究成果を共有しています。また、全国の小中学校や高校と事例調査や実証研究を実施しているほか、中高生と社会人が探究的な学びをもとに交流する「ベネッセSTEAMフェスタ」や、全国の先生と毎週オンラインで対話する「生徒の気づきと学びを最大化するプロジェクト」なども開催。これら社外との協働を通して得た最新情報も事業部門の担当者などと共有し、社員の専門性や発信力の向上にも努めています。

ベネッセ教育総合研究所

「DIF」を通じたパートナーシップの強化

投資ファシリティを設立し、オープンイノベーションを加速

ベネッセグループは、オープンイノベーションを推進し、事業パートナーとの連携を強化することで、社会課題の解決につながる事業の成長を加速しています。
この取り組みの一環として、2021年11月に「Digital Innovation Fund(DIF)」という投資ファシリティを設立しました。DIFを通じて教育や生活、介護などの領域で革新的なデジタルテクノロジーを持つベンチャー・スタートアップ企業とのパートナーシップを強化し、各事業やサービスのアップデートや新たな価値の共創を目指しており、5年間で総額50億円の投資枠を設定しています。

有望な技術を持つパートナーとともにグループの持続的な成長を目指す

DIFによる投資・提携先の選定においては、次の3つの要件を設定しています。

  • 教育、生活、介護領域などにおいて、ベネッセグループとの事業上のシナジーが期待できるパートナー
  • ベネッセが推進するDXに関連するサービスの企画・開発力などを有するパートナー
  • ベネッセの関連領域において革新的な技術・市場を持つ企業もしくはその開拓が期待できるパートナー

DIFの活動と連携し、当社グループでは、DX戦略の推進を担う「Digital Innovation Partners(DIP)」部門で継続的にディスラプションのウォッチを行っています。一般にディスラプションウォッチは、将来脅威になるプレーヤー(ディスラプター)とその技術分野を特定・監視するものと捉えられていますが、当社グループはそれにとどまらず、グループの事業とのシナジーが期待できる有望なパートナーの探索として実施。「顧客のニーズに応える新たな商品・サービス、社会課題の解決に貢献する新たな事業をつくる」という理念を共有できる企業とのパートナーシップを構築することで、そのパートナー企業とともにグループの持続的な成長を目指しています。設立以降、すでに複数のパートナーに対して出資を実行しており、さらなる事業成長に今後も貢献していきます。

DIFを通じたパートナーシップの強化

DIFを通じたパートナーシップの強化

ディスラプションのウォッチ

ディスラプションのウォッチ

出資先企業(2022年7月時点)

出資先企業(2022年7月時点)
出資先企業(2022年7月時点)
水上 宙士
ベネッセホールディングス
Digital Innovation Partners
DXコンサルティング部 部長
水上 宙士

DIPが進めるデジタルシフトのコンサルティングや、ディスラプションへの対応は、各事業部門ごとに行っているので、事業部門の課題も同時に扱うことになります。
例えばデジタルシフトのコンサルティングで、各事業部門に入っていくなかで、見えてくる状況があり、事業フェーズに合わせたDX推進に取り組んでいます。
各事業部門のDX課題に対しては、すべて自前主義的に社内だけで開発するだけではなく、社外と共創していくことで解決することもできると思っています。今もいくつか事例はありますが、今後、DIFの活動を通じて、より高い専門性を持つ社外パートナーと有機的につながりを持ちながらDXをさらに推進していきたいです。
ベネッセは人の成長を支援する企業ですので、お客さまだけでなく、DIFに関わった社員も成長していってほしいという願いがあります。プロジェクトに関わっている全員が成長できるような制度や文化をつくっていきたいです。会社にとっても良い影響が生まれると思いますし、ベネッセらしい取り組みになるのではと期待しています。

中村 潤平
ベネッセホールディングス
Digital Innovation Partners
DXコンサルティング部
デジタルイノベーション課 課長
Digital Innovation Fund
アシスタントファンドマネージャー
中村 潤平

ベネッセにはない能力・アイデアを持つスタートアップとの協業によって、新しい価値をスピード感を持って提供することができる機会が広がると捉えています。教育・介護・生活領域はもちろんのこと、企業理念「よく生きる」に沿えば新しい領域の可能性も含めて幅広に検討を進めています。
これまでの活動経緯としては、「ディスラプションウォッチ」として教育・介護・生活領域のデジタルプレイヤーの動向をモニタリングしてまいりましたが、DIFはその具体策の一環としてイノベーションを起こす起爆剤のような位置付けを狙っています。
2021年には、各事業でデジタルディスラプションをもたらす可能性がある企業を世界中から約1,900社選定してリスト化しました。現在はそのリストも参考にしながら事業シナジーや純投資の観点から協業候補となり得るスタートアップとの面会を続け、事業部とも協議をしています。現在は、Web3.0に関連してNFT・トークン、ブロックチェーン、メタバースの領域について私は注目しています。これが実現すれば、新規事業の共創、事業領域の拡大に大きく貢献する可能性があると信じて活動を進めています。

杉田 直樹
ベネッセホールディングス
財務・経理本部 財務部
投資・調達担当課長
Digital Innovation Fund
アシスタントファンドマネージャー
杉田 直樹

DIFでは、持株会社であるベネッセホールディングスから本体出資を行い、各事業会社との連携を促すことで事業連携を速やかにスケールアップしていく仕組みづくりをしています。当社グループでは、過去からマイノリティ出資などの経験があり、実際に出資先が上場した実績が複数あります。今回のDIFの活動でもそうした自分たちの経験を生かすことができると思っています。
DIFとしてはすでに4社に出資、提携をしていますが、いずれも双方にとってWin-Winの関係性を強く意識して、出資実行しています。当社グループにとって財務的なメリットやシナジーなどの期待があることは前提になりますが、出資先パートナー企業に対して資金面だけでなく事業面などでも支援を行うことで成長を加速してもらうことが、最終的に双方のメリットにつながると考えています。
このように出資を梃子にしながらパートナー企業と双方Win-Winの関係性を追求し、当社グループの持続的な成長を実現していきます。

最終更新日:2022年09月05日