教育

大学生が振り返る大学受験調査

推薦・AO入学者の高3時の学習時間、「1日1時間未満」が半数

公開日:2012年11月26日
株式会社ベネッセコーポレーション(本社:岡山市、以下ベネッセ)の社内シンクタンク「ベネッセ教育研究開発センター」では、2012年8月に、全国の大学生と専門学校生、計5,155人を対象に、高校生活や受験期の学習について振り返ってもらう、インターネット調査を実施しました。(以下では、大学生〔短大生・附属高校推薦による入学者を除く〕4,101名を対象に分析)

推薦・AO入試の利用率が、私立大学では入学者の約半数、国公立大学でも約2割に迫るなか(文科省調べ)、現在の大学入試のあり方が高校生や大学生の学習行動にどんな影響を与えているのかが、いま注目されています。そのよう状況下において、本調査では、高校時代の学習・生活態度と、受験の際の入試形態や大学での学びとの関係を明らかにすることができる点に、大きな特徴があります。

主な調査結果は以下の通りです。

1. 推薦・AO入学者の約半数が、高3時の学習時間が1日1時間未満であり、「受験対策をしなかった」比率も5人に1人にのぼるなど、受験期の学習習慣が未確立なまま大学へ進学している。

1)推薦・AO入学者の高3・4月、9月時点の1日あたりの学習時間をみると、「1時間未満」(「0時間」+「1時間未満」)の比率は、それぞれ56.4%、45.0%となっており、約半数が1時間未満しか勉強していない。入試難易度(進研模試の偏差値基準)別にみると、偏差値が低いほど「1時間未満」の比率が高まり、偏差値49以下では、4月は75.4%、9月は64.8%と高くなっている。

2)推薦・AO入学者の5人に1人(20.1%)が「受験対策をしなかった」と回答している。入試難易度が低い大学(偏差値49以下)への入学者では、「受験対策をしなかった」学生の比率は29.8%まで上昇する。他方、受験対策をした学生であっても、一般入試のための教科学習を経験した学生は半数に満たない。
※ここで「受験対策」とは、「一般入試の教科学習、推薦・AO入試のための小論文や面接などの準備」を指す。

2. 受験対策において「あきらめずに努力し続けた」学生ほど、大学への満足度は高い。特に、推薦・AO入学者の中で「あきらめずに努力し続けた」学生の大学への満足度は、一般入試での同様の入学者より高い。受験対策期間が長いなど、地道に努力を積み重ねているようすがうかがえる。

3)受験対策において「あきらめずに努力し続けた」と振り返っている学生ほど、大学への満足度や大学での学びに対する意欲が高い。なかでも、推薦・AO入学者のうち、「あきらめずに努力し続けた」学生の大学への満足度や大学での学びに対する意欲は、一般入試による入学者よりも高い。

4)「あきらめずに努力し続けた」と回答している推薦・AO入学者は、早い段階から受験対策を開始し、学習時間を確保する期間も長期になっている。

今の時代も受験は成長のためのハードル

今回の調査からは、推薦・AO 入学者、とりわけ入試難易度の低い大学(偏差値49 以下)への入学者は、約3 割が高校3 年生になってもまったく勉強しておらず、受験対策をしていないことが明らかになりました。一方、学生の受験に向かう姿勢に着目したところ、大学入学へ向けての学習を「あきらめずに努力し続けた」学生は、一般入試による入学者以上に大学入学後の満足度や学ぶ意欲も高いことがわかりました。現状では、努力の積み重ねにより、受験というハードルを乗り越えることが大学で学ぶための自信や積極性につながっていると思われます。

「選ぶ入試」から「育てる」入試へ

このような状況から、これからの推薦・AO 入試においても、大学で学ぶ目的に加えて、高校での学ぶ努力とその成果(学力到達度)をこれまで以上に重視し選考すること、さらには、選考過程のなかにさまざまな課題を取り入れることで、大学入学へ向けて学習習慣づけを行うとともに、大学での学びに対する意識・意欲を喚起させる仕組みを取り入れる工夫が必要と考えます。例えば、一般入試受験を義務づける、大学での授業を先行して受けレポートを提出させることなどが考えられます。

上記の調査の詳細については以下でご覧いただけます。
http://benesse.jp/berd/center/open/report/daigaku_jyuken/2012/index.html

最終更新日:2020年03月09日