教育

首都圏保護者の中学受験に関する意識調査

公立中高一貫校の増加により、中学受験をする層は多様化
「中学受験する・しない」、小3で半数の保護者が検討中

公開日:2012年11月19日
株式会社ベネッセコーポレーション(本社:岡山市、以下ベネッセ)の社内シンクタンク「ベネッセ教育研究開発センター」では、2012年9月に、首都圏の公立小学校3年生から6年生の子どもをもつ父親・母親5,256名を対象に、「首都圏保護者の中学受験に関する意識調査」を実施しました。本調査は、中学受験の実態を捉えるとともに、その課題を明らかにすることを目的に行ったものです。

*2007年に全国を対象にした類似内容の形式の異なる「中学校選択に関する調査」を行っており、一部、参考資料として掲載しています。

本調査の主な結果は、以下の通りです。
  • 中学受験予定の保護者の3割強が、公立中高一貫校を第一志望にしており、中学受験を検討する層は多様化している。
    • 今回の調査では、中学受験をさせる予定の保護者は、小学校3~6年生全体の17.5%であった(6年生のみでは23.3%)。そのうち、52.8%が私立中学校を、7.5%が国立大学の附属中学校を、33.9%が公立中高一貫校を第一志望にしている。また、中学受験をさせる予定の保護者の約2割が、私立中学校と公立中高一貫校の両方の受験(受検)を検討している。
    • 公立中高一貫校は、私立中学校に比べて、さまざまな層に選ばれている。私立中学校第一志望者は、世帯年収1000万円以上が40.3%、400万円未満が3.5%、父親・母親の学歴がともに大学・大学院卒である比率が45.3%であるのに対し、公立中高一貫校第一志望者は、世帯年収1000万円以上が17.6%、400万円未満が6.7%、父親・母親の学歴がともに大学・大学院卒である比率が28.2%である。
  • 小学校3年生時点では「中学受験しない」と決めている保護者は5割にとどまり、小学校6年生まで、「受験する・しない」の検討は長期化している。
    • 小学校3年生で、中学受験をさせないと回答した保護者は約5割(48.2%)にとどまり、約4割(38.8%)は「まだ決めていない」と保留にしている。また、小学校6年生で「まだ決めていない」と回答した人も1割弱(9.1%)いる。
    • 中学受験をさせる予定の保護者(6年生)のうち4割強(44.3%)が、受験をやめさせようと思ったことが「あった」(「何度もあった」+「時々あった」)と回答している。一方で、中学受験をさせない予定の保護者(6年生)のうち2割強(22.6%)が、受験をさせようと思ったことが「あった」(「何度もあった」+「時々あった」)と回答している。
    • 中学受験をさせる予定の保護者が受験をやめようと思った理由の上位には、子どものやる気、疲れ、ストレス、生活のゆとりなど、子どもの負担に関することがあがっている。それに次いで、受験準備費用、中学入学後の授業料など金銭面の負担や、親子関係の悪化に関することがあがっている。
  • 中学受験予定の保護者は、子どもの進路に強い希望を持ち、その実現に向けて、早期の準備の必要性を感じている。
    • 「学歴があっても、社会で通用する力が身についていなければ意味がない」などと、9割以上の保護者が捉えている(「とてもそう思う」+「まあそう思う」の%)。
    • さらに、中学受験をさせる予定の保護者は、「社会で必要とされる力を中高生のうちから積極的につけさせたい」「多尐無理をしても子どもの教育にはお金をかけたい」「子どもには一流の大学に入ってほしい」など、進路への強い希望を持ち、早い段階からの準備の必要性を感じている。
  • 中学受験予定の父親は、子どもの学習への関わりが強い。
    • 中学受験を最初に言い出した人は、母親が約半数(52.3%)、子ども自身が22.1%、父親が23.8%であり、母親が主導している比率が高い。
    • 中学受験をさせる予定の父親は、中学受験をさせない予定の父親に比べて、「テストの点数を確認する」(15.5ポイント差)、「勉強している内容を確認する」(13.3ポイント差)、「勉強の意義や大切さを伝える」(16.8ポイント差)など、子どもの学習への関わりが強い(「よくある」+「時々ある」の%)。母親は、「勉強の計画を一緒に立てる」(22.9ポイント差)、「勉強の計画を管理する」(23.2ポイント差)、「中学校に関する情報を収集する」(61.4ポイント差)などで、中学受験予定による差が大きい(「よくある」+「時々ある」の%)。
今回の調査からは、先の見えない社会において、子どもが尐しでも良い教育を受けられるよう、早いうちから準備をして中学受験を選択する保護者の姿が浮き彫りになりました。中学受験は、主に保護者(特に母親)主導で受験が始まり、父親も含めた父母子という家族ぐるみの取り組みになっているといえます。

さらに、1999年に設立が始まった公立中高一貫校の増加に伴い、現在多様な層が中学受験を考えるようになっていることもわかります。公立中高一貫校が、より多くの家庭にとって、選択の機会を提供することになったことは評価すべき点といえます。

一方で、より多様な選択肢ができたこともあり、保護者の負担や悩みが、子どもが小学校生活の約半分にあたるほど長期にわたっていることについては課題であるといえます。子どもにとって小学校6年間はどのような時期であるのか、またどのような成長・発達の環境を保障すべきなのかなどを再考するとともに、中学受験の長期にわたる負担を軽減することについても検討する必要があるのではないでしょうか。

最終更新日:2020年03月09日