教育

高校教員を対象とした「学習指導基本調査(高校版)」

高校教員の約8割が「義務教育での学習内容の未定着」に悩み
公立高校の半数で土曜学習・進路指導等を実施するなど学力強化の取り組みが盛ん

公開日:2011年04月26日
株式会社ベネッセコーポレーション(本社、岡山市、以下ベネッセ)の社内シンクタンク「Benesse 教育研究開発センター」では、学校の取り組みや、教員の学習指導の実態および意識を把握するため、2010 年8~9 月に、全国の公立の高校の校長および教員を対象に「学習指導基本調査(高校版)」を実施しました。

「学習指導基本調査」は小・中学校の教員を対象に1997 年から実施していますが、高校の教員を対象とした学習指導基本調査は今回が初となります。

1 )教員の約8 割が、「生徒の学習意欲の低さ」と「義務教育での学習内容の未定着」に悩み

  • 高校教員の指導上の悩みとして、「生徒の学習意欲が低い」「義務教育段階の学習内容が定着していない生徒が多い」がともに約8 割となっている。

2)完全学校週5 日制下で、公立高校の約半数が「土曜日の学習、進路等の指導」を実施

  • 2002 年の完全学校週5 日制の導入から約10 年が経過したが、公立高校の50.7%で「土曜日の学習、進路等の指導」を実施している。
  • また「平日の放課後の補習、進路等の指導」は90.7%の高校で実施されており、「平日の朝読書」(40.5%)、「平日の朝学習」(50.1%)など、学習習慣の確立や受験対策を目的とした取り組みも盛んである。

3)約半数の教員が、土日は「ほとんど毎週出勤」しており、土日勤務が恒常化している

  • さらに教員の土・日曜日の出勤頻度をたずねたところ、「ほとんど毎週出勤」が47.0%、「2 週間に1 日程度」が22.6%であり、土日勤務が恒常化していることがうかがえる。

4)普通科高校の間で、生徒への指導実態や学校が抱える課題などの多様化が明らかに

  • 普通科の高校について、生徒の中学時代の評定平均別*に集計したところ、評定平均「4.5~5.0 点」の高校では「生徒の学習意欲の低さ」「義務教育での学習内容の未定着」に悩む教員は5 割未満であったが、評定平均「3 点未満」の高校では約9 割であり、普通科の高校間で生徒の実態が大きく異なるようすがうかがえる。
  • 教員の指導観をみると、評定平均「4.5~5.0 点」の高校では8 割近くが「自発的に学習する意欲や習慣を身につけさせること」を重視しているのに対して、評定平均「3 点未満」の高校の約半数が「たとえ強制してでも、とにかく学習させること」を重視する傾向があるなど、学校間での生徒の実態の違いから学校の指導方針や教員の指導観も異なることが明らかになった。

*「入学した平均的な生徒の中学時代の成績(評定平均)」に関する校長の回答をもとにグループ分けを行い、集計した。
今回の調査では、高校での指導の実態や教員からみた高校生の実態が明らかになりました。特に高校生では学習意欲の低さと義務教育内容の未定着といった、学習に関しての課題が大きいことが明らかになるとともに、そうした生徒の実態に対して、高校では朝や放課後、土曜日の時間を活用した学習・進路指導等の取り組みが行われていることも明らかになりました。いっぽう同じ普通科であっても、生徒の中学時代の評定平均が高い学校と低い学校の間では、指導の実態や抱える課題の違いが鮮明となり、普通科と専門学科などの学科間だけでなく、普通科の間での違いについても考える必要があるといえます。

今回の調査で浮き彫りとなった課題をもとに、中高接続の問題、さらに制度面・実践面について継続的に議論し、改善していく必要があると考えます。


*今回の調査の詳細はこちらをご覧ください。

最終更新日:2020年03月09日