教育

小・中学校を対象とした「第5回学習指導基本調査」
教員の指導観、訓練重視が小学校4割、中学校6割

基礎・基本の「習得」を重視するも、「活用」「探究」に課題

公開日:2011年03月09日
 株式会社ベネッセコーポレーション(本社、岡山市、以下ベネッセ)の社内シンクタンク「Benesse教育研究開発センター」では、学校の取り組みや、教員の学習指導の実態および意識を把握するため、2010年8~9月に、全国の公立の小・中学校の校長および教員を対象に「第5回学習指導基本調査」を実施しました。本調査は、小・中学校に対して、1997年、1998年、2002年、2007年にも実施しており、過去13年間にわたる教育現場の変化をとらえることができます。本報告は、小・中学校調査の主な結果をまとめたものです
1)「学力向上」を目標に掲げる学校が増加、教員の指導観も訓練重視が小学校4割、中学校6割
  • 学校教育目標に「学力向上 学力定着」を掲げる学校は、小学校41.8%、中学校36.1%で、現行の学習指導要領導入時の02年と比べ、小学校で20ポイント以上、中学校で10ポイント以上増加した。
  • さらに教員の指導観では、「一人前の大人になるために必要なことを教え、訓練すること」が小・中学校とも調査開始以来一貫して増加しており(小学校98年22.4%→10年43.9%、中学校97年39.6%→10年61.0%)、子どもの学力向上に対して訓練を志向する教員の様子がうかがえる。

2)標準時数より多い授業時数を設定している小学校5割、中学校3割
  • 国が定めている授業時数より多く設定している小学校は5割、中学校は3割で、小・中学校ともに02年と比べ増加している。
  • 小・中学校とも朝読書は小学校で95.0%、中学校で89.3%となった。

3)授業で心がけているのは、「習得」8割弱、「活用」4割台、「探究」1~2割台
  • 小・中学校の教員が授業で「多くするように特に心がけている」のは、「習得」が8割弱に対し、「活用」が4割台、「探究」が1~2割台である。
  • 新学習指導要領で重視されている「表現活動を取り入れた授業」を「多くするように特に心がけている」のは、小学校02年55.1%→07年41.9%→10年44.4%、中学校02年39.3%→07年30.9%→10年36.5%と、07年に一旦減?したが、再び増加した。

4)新学習指導要領の全面実施に際し、「教員の多忙化の加速」と「学力格差の拡大」に不安
  • 新学習指導要領の全面実施に際して、小・中学校の校長の9割弱が「教員の多忙化の加速」への不安をあげており、さらに「児童・生徒間の学力格差の拡大」(小学校7割、中学校6割)に対する不安も大きい。
  • 小学校教員では「外国語活動」(65.4%)、また小・中学校の教員ともに新学習指導要領で重視される「探究的な学習」(小学校:54.4%、中学校52.8%)への不安が大きい。
 今回の調査からは、学校教育目標の変化、標準より多い年間授業時数の設定、「習得」を中心とした授業など、学力向上のための取り組みが強まっていることが分かります。教員の指導観もそれに合わせて変化しています。そのもとで、授業において「活用」「探究」への心がけはみられるものの、まだ十分に対応できていないのが現状です。これらの背景には、児童・生徒間の学力格差の拡大など子どもの状況に加え、教員の多忙な勤務の実態などがあると考えられます。現在の学習指導は、「子どもとともに成長できる」といった教員が感じている教職の魅力に支えられている面がありますが、新学習指導要領の実現には、条件整備や資源配分など、さまざまな制度面、実践面のサポートが必要と考えます。

※調査のダイジェスト資料はこちらよりご覧ください。
http://benesse.jp/berd/center/open/report/shidou_kihon5/sc_dai/index.html

最終更新日:2020年03月09日