「各事業単位」と「グループ共通」の二つのテーマでグループ全体のDXを推進

ベネッセグループは多様な事業を展開しており、各事業顧客やビジネスモデル、競争環境はそれぞれ異なります。そのためDXについても、一様の考え方ではなく、各事業の特性やデジタル化の進展状況などに合わせた具体的戦略が必要です。一方でDX推進に必要となる人財の育成やシステム基盤の整備などは、グループ共通の課題として捉える必要があります。
そこで、DXの推進にあたっては、「各事業のフェイズに合わせたDX推進」、「組織のDX能力向上」という大きく二つのテーマを設定しています。前者については、各事業におけるデジタル化の状況を「デジタルシフト」「インテグレーション」「ディスラプション」の三つのフェーズで捉え、市場や競合環境なども踏まえて個々の商品・サービスのデジタル展開を進めています。後者については、デジタル人財の育成や社内外の専門家とのパートナーシップの強化、組織体制やシステム基盤の整備など、持続的な成長の実現に向けてグループ共通の課題の解決に取り組んでいます。

事業の状況に合わせたDX戦略を展開

事業の状況に合わせたDX戦略を展開

DX戦略の立案と推進を担うグループ横断型の組織を新設

DXの取り組みを着実に推進していくために、2021年4月、「DIP」という新組織をつくりました。CDO(Chief DigitalOfficer)を配置し、デジタル部門、IT部門、人財育成部門、DX推進のためのコンサル部門などを統合することで、戦略の立案から資源・投資配分、具体的施策の推進まで、部門・会社の垣根を越えてDXの取り組みを牽引しています。

当社グループは、このDIPを中心に「各事業単位」「グループ共通」それぞれのテーマに沿った具体的な重点実行施策を推進することで、グループ全体のDX戦略を加速しています。

DX推進体制

DX推進体制

つねにお客さまにとって最良の商品・サービスを提供し続ける企業グループへ

DX戦略における最終ゴールは「つねに最良の商品・サービスを提供できる会社であり続ける」ことです。当社グループの商品やサービスは、市場から高い評価を得ていますが、デジタル技術の高度化にともなって新技術を活用した新しいサービスやディスラプターがどんどん登場しています。こうした状況のなかでは、ベネッセのやり方やサービスがお客さまにとってつねにベストであるとは限りません。

DXで高めたいのは「こういうサービスがあったらいいな」とお客さまが思った時、それを即実現できる力です。デジタルはあくまでその手段であり、かつデジタルだけが手段でもありません。これまでの歴史のなかで当社グループが構築してきた顧客基盤や、教育・介護分野での知見・ノウハウといった基盤と、新しい技術や機能、ビジネスモデルを掛け合わせることで、ベストな価値を提供し続けていくことが、当社グループが目指すべきゴールであると考えています。

具体施策の展開①事業フェーズに合わせたDX推進

社内コンサルタントの派遣で各現場のデジタルシフトを加速

DXにおける各事業の状況を三つのフェーズで捉え、それに応じた取り組みを進めています。
非デジタルのサービスや業務プロセスを段階的にデジタル化し、品質の安定化や生産性の向上を目指す「デジタルシフト」には、全事業が着手しています。ただし、分野によっては事業の特性からシフトしにくいものがあり、そうした事業に対してはDIPから高スキルのDX人財を派遣し、軌道に乗るまで伴走しています。

この施策のサポート領域は「データ利活用」「デジタルマーケティング」「業務効率化」の大きく三つ。各現場の課題に応じて最適なメンバーがコンサルタントとして現場に入り、事業部門のデジタル化を支援しています。最終的には現場が自力でデジタルシフトを進めていけるよう、コンサルティングを通して各現場の組織力診断も実施。また、成果をほかの事業部門へ横展開することで組織能力を効率的に向上させています。

デジタルシフトプロジェクト

デジタルシフトプロジェクト

各事業におけるデータ利活用の基盤構築に注力

デジタルシフトが進んだ事業やサービスでは、デジタル化を通して得られるデータをいかに有効活用していくかがテーマになります。そこで、各事業部門の効果的なデータ利活用を促進する基盤構築にも取り組んでいます。

どのようなデータを利活用すればその事業の拡大が図れるか仮説を立て、実証実験を実施。成果が具体化すれば、事業部門が自分たちでデータを利活用して事業を回せるように、データを収集・分析するためのIT基盤の整備や、分析に必要な人財の育成、分析環境やプロセスの整備・標準化をサポートしています。

カオスマップでディスラプションをウオッチ

多様な領域で事業を展開する当社グループは、デジタル・ディスラプションの影響を受けるリスクも大きいことから、競争環境の変化と自社の強みを客観的に評価する「ディスラプションウオッチ」を継続的に実施しています。

ベンチャーも含めた世界中の新サービスの動きをデスクリサーチで洗い出し、事業領域・カテゴリーごとにカオスマップを作成。「どのカテゴリーにどのようなプレイヤーが増えているか」「どこに資金が集まっているか」など、事業責任者や現場のデジタル担当とともに変化の兆しを監視しています。また、ディスラプターとなる可能性のあるプレイヤーについては、共創、協業、連携などの関係構築を検討します。あわせて自らがディスラプターとして新規参入できる市場やサービス分野の探索も進めています。

具体施策の展開②組織のDX能力向上

個人のデジタルスキルを見える化して計画的に配置・育成

DX人財の開発にあたり、DX人財の業務内容を6職種に分類するとともに、職種ごとに3段階のスキルレベルを設定しています。さらに外部のアセスメント基準も活用しながら個々の人財に対するスキルアセスメントを実施し、そのデータをシステムで管理。社内のどの部門に、どの職種・レベルの人財が何名いるかを正確に把握することで、DX人財を計画的にアサイン・育成・採用しています。

例えば、各組織に必要とされる人財の職種・レベルと現状にギャップがある場合は、社内育成やキャリア採用の計画を立案し、組織能力の強化を図っています。また、個々人のスキルレベルを向上させていくために、多様な事業の実例を活用したオリジナル研修プログラムを多数開発しています。

このように各職場で求められるスキルを明確化したことで、グループ内でのDX人財の配置もより柔軟に検討することができます。また、さまざまな事業部門・部署への異動の可能性が開かれることは、個々のDX人財のモチベーションや採用の面でもメリットが生まれつつあります。現在この取り組みは、ベネッセコーポレーションの社員を対象に実施していますが、今後ほかの事業会社にも拡大していく方針です。

DX人財開発施策

事業の進化に合わせてシステムアーキテクチャを再設計

サービスごとに設計・開発したシステムが、事業進化のなかでいわゆるレガシーシステムとなり、技術的負債になるケースがあったことから、システム開発部門と事業部門の連携を従来以上に強化。事業計画とシステム計画をセットで検討し、事業計画の進化に合わせて、システムのアーキテクチャを緩やかに再設計するとともに、システムインフラについてはクラウド環境へ移行していくことで、コストを抑えつつ変化への柔軟な対応とシステム品質の向上を目指しています。

また、クラウド環境やSaaS・ASPの活用、外部パートナーとの共同作業、さらには在宅勤務やリモートワークなどが進んでいることを踏まえ、ゼロトラストの前提に立ち情報セキュリティ対策も高度化していきます。

より実効性の高い開発ガバナンスを推進

システム開発のガバナンスについても、開発品質を高め、安定したサービスをスピーディに提供できるよう強化していきます。具体的には、システムアーキテクチャの妥当性やDX推進上のリスクを検知・支援する専門チームを新たに設置。グループ内の重要な開発プロジェクトの進捗を、定期的にモニタリングしながら、課題・リスクの発見と解決支援を行っています。

さらに、これらの取り組みで得られた経験値・ノウハウを横展開することで、プロジェクト推進者の育成やDX組織能力の向上につなげていきます。

最終更新日:2021年9月30日