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“使える”英語が身に付く教材を

国内教育 ● 進研ゼミ 英語4技能教材の開発

株式会社ベネッセコーポレーションの進研ゼミでは、子どもたちが社会に出ても使える英語を身に付けてもらえるよう、2019年4月に英語4技能を習得できる教材をリリースしました。
新たな教材の特長と、その開発に込めた思いとは——プロジェクト全体を統括した商品開発本部本部長の三橋佐知子、各部署との協力を得るため奔走した育成商品開発部部長の富永伸絵、規模の拡大に対応するシステムづくりを取りまとめた情報システム部英語基盤開発課課長 小野悠人の3名に話を聞きました。

インタビュー1

英語教育の変化を見据えた教材を開発

商品開発本部 本部長三橋 佐知子

英語4技能教材をリリースした背景を教えてください。

三橋:今、教育分野でも大変革が起きており、子どもたちは“予測できない未来”を生き抜くために、主体的に考え、学ぶ姿勢が求められています。その一つが、これまで親世代が受けてきた学習とは異なる学習観が求められている「英語」です。親世代の方々は自身の成功経験がないため、子どもに教えることができず、不安を感じていらっしゃいます。そのため、自宅学習を牽引してきた進研ゼミには、一層の期待が寄せられていました。

2020年の大学入試改革では、英語は「読む・書く・聞く・話す」の4技能で評価され、資格・検定試験を活用することが示されています。そこで、私たちは2019年4月に社会に求められる英語力を確実に習得できる、小学校から高校段階までを一気通貫した英語4技能教材をリリースしたのです。

ベネッセだからこそ提供できた4技能教材の特長や強みを教えてください。

三橋:英語は、英会話スクールなどの学習経験と習熟度がリンクしやすい教科です。そのため、学年で区切るのではなく、12段階の習熟度別に分けて教材を提供することとしました。より個々のレベルに合った学習が可能となりました。

また、安価なオンライン英会話レッスンは多種多様にありますが、デジタルの学びと連携し、体系立てて4技能を伸ばすものはほぼありません。その点、今回の教材では4技能を体系立てて連携させて学びつつ、さらにオンラインレッスンで発信力(話す・書く)までを一気に伸ばしていきます。それが本教材の最大の特長です。

加えて、進研ゼミは小中高合わせて180万人の巨大なプラットフォームです(2019年4月時点)。多くの子どもたちから随時リアクションを受け取りながら改善を図っていけることも、本教材の強みといえるでしょう。今後もさまざまな部門とタッグを組んで、一層子どもたちの力を伸ばす教材へブラッシュアップを図っていきます。

12段階習熟度別トレーニングフロー
12段階習熟度別トレーニングフロー

※1 外国語の運用能力を測定する欧州の規格

※2 Level.12は2020年に向けて開発中

4技能教材も含め、進研ゼミは今後の子どもたちにとってどのような存在となっていきたいでしょうか。

これまでは正解を求めて、正解に向けて学んでいく学習が重視されてきました。しかし、今後は正解のない世の中で自ら問いを立てて、考えて行動していくことが求められます。そのためには、自学・自習が不可欠です。子どもたちに伴走してサポートし続けていくことが、ベネッセコーポレーションの願いです。

今回の4技能教材では、習熟度別とすることで「好きなことをどんどん伸ばしていこう!」と主体的で広がりのある学びを提供できるようになりました。これは主体的な学習者を育てたいという進研ゼミの姿勢の現れともいえます。

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インタビュー2

ゴールは、4技能統合学習で、 “使える英語”の習得

育成商品開発部 部長富永 伸絵

4技能教材リリースの旗振り役として、開発に込めた思いを教えてください。

富永:現在、教育は変革期を迎えています。子どもたちにとって、絶対に必要となる力とは何かを見極めて、そこを確実に伸ばしていく存在が必要です。

ベネッセコーポレーションが打ち出した進研ゼミの英語4技能教材は、オンラインレッスンとデジタルの学びを結びつけて、学んだ内容を効果的にアウトプットできる教材です。

新しい学びのため、保護者の方の中にはイメージしにくい方もいらっしゃるかもしれませんし、抵抗感を持つお子さんもいらっしゃるかもしれません。

そうした不安を受け止めて、楽しみながら効果を実感していただける学びを提供することが私の役割だと思います。教育として求められる理想を子供たちにとって取り組みたくなる学びへと落とし込んでいくことが、求められていると感じていました。

4技能教材をリリースした手ごたえや反響を教えてください。

富永:リリースした2か月後の状況としては、低学年の使用率が高く、特にタブレッドで受講されている小学校1年生は50%超の起動率でした。さらに、「こうした教材を受講費内で取り組むことができて嬉しい」「英語を話せるようになりそうです」などのお声もいただいています。想定以上に学齢が低い方々から英語に対する期待があるのだということを確信しました。

中高生の受講生からは、資格対策としてのニーズが高いことが見えてきました。検定や入試は「使える英語」の習得の一過程ではありますが、学習する子供たちにとっては重要な指標です。今後は資格取得に向けた演習を意識しながら、サービスの改善を図っていきます。

今後、中長期的な視点でどのように教材を進化させていきたいですか。

富永:AIとの対話による英会話の学習などを導入していきます。英語の発話能力を伸ばしたくても、外国人講師との会話にハードルを感じる子どもたちもいます。そこで例えば、英語を話すAIのキャラクターがその受講者に合った話題を提供することで、英語での会話への抵抗感をなくすこともできます。

さらに、年に1回の検定(アセスメント)で、どれくらい英語力を伸ばすことができたのかを測る仕組みもつくりたいと考えています。アセスメントにより、できない箇所を振り返り、再度学び直すことができます。教材提供からアセスメントサービスまでを一気通貫で行えるベネッセコーポレーションの強みを活かして、子ども達の学びのPDCAを回していきます。

受講者の力を着実に伸ばす英語学習サイクル

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インタビュー3

培ってきた膨大なデータやノウハウの活用をITで支える

情報システム部 英語基盤開発課 課長小野 悠人

教材開発を支えたデジタル基盤でのチャレンジを教えてください。

小野:私はシステム開発のメンバーとして4技能教材に関わりました。これまでもオプションとして英語4技能教材を提供してきましたが、受講者全員が受講するとなると利用者数が10数倍となります。数万人で動いていたシステムを、100万人以上の負荷に耐えられる状態にしていくことが求められました。

ユーザーが増加していくと、使用される端末や環境もどんどん多様になっていくので、どのお客様もきちんと使えるように設計していくことが必要です。パソコンやタブレットなどさまざまな使用環境ごとにテストを行って、マルチデバイスで安全面の確保を図っていきました。

現在、課題に感じている部分と今後の展望を教えてください。

小野: 安定して持続的な開発を進めるためにも、分析再活用が大きなテーマとなってきます。100万を超える子どもたちが英語の4技能に取り組んでいるデータを持っているのはベネッセだけなんです。それを今後の活用提案や改善に活かせるように体制をつくっていきます。

プロダクト担当と一緒につくることが求められますが、そのためにはプロダクト側にもデジタルの素養やシステムの知識を持っておいてもらわなければいけません。逆もしかりで、システムは技術だけあれば開発ができるわけではありません。プロダクト担当と対等に話せるくらいに、ユーザーを理解して、企画の背景を語れないといけません。よいデジタル教材を提供するために、チームづくりや人材育成の視点が欠かせないのです。

競争が激化するデジタルサービスの中で、ベネッセだからこそ提供できる価値を教えてください。

小野:社会は刻一刻と変化していきます。「一度リリースしたから終わり」というわけではなく、ユーザーの声を聞きながらバージョンアップしていく姿勢が欠かせません。進研ゼミの受講者は180万人以上。これだけ多くのデータを基に、ブラッシュアップを図っていけるのは大きな強みといえます。

さらに、ベネッセコーポレーションは進研ゼミの紙媒体はもちろん、塾などの場事業も保有しています。デジタルにだけ頼るのではなく、保有している場や人というリソースを、デジタルと融合させていくことで付加価値を生み出していけるとも考えています。

こうした連携ができれば、4技能教材を自宅で頑張った子に対し、場で外国人講師が対話する際に「最近頑張っているね!」などと声かけし、主体性を高めていくことができます。全方位的に子どもの学びを見守っていくことができるのです。これまで蓄積した教育事業の知見を活かし、デジタルの力で細かく最適化したタイムリーな価値を提供していきたいと考えています。

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英語教育改革の先を見据えて

進研ゼミ 英語4技能教材の開発

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“使える”英語が身に付く教材を

最終更新日:2019年09月11日