生物多様性の回復・資源の保全への対応
私たちの生活を支える自然が急速に失われつつある今、ベネッセは、未来に生きる子どもたちに安心して住み続けることのできる地球環境を残すため、国際社会が目指す「ネイチャーポジティブの実現」に貢献していきます。
ベネッセの事業活動は、紙資源をはじめとする多くの自然資本を利用して成り立っています。私たちの事業活動によって生物多様性や自然環境へ負の影響を及ぼすことのないよう、事業モデルのデジタルトランスフォーメーション(DX)を通じて資源の使用量の削減を図るとともに、原材料調達においては自然環境に配慮した持続可能な原材料の調達、リサイクルやリユースの推進を行います。
また、教育事業を軸とするベネッセグループの事業特性をふまえ、子どもから大人までを対象とした環境教育や生物多様性保全につながる教育サービスを拡充することにより、社会における自然資本の価値の認識の向上、ひいては人々の行動変革を促し、昆明・モントリオール生物多様性枠組および生物多様性国家戦略に掲げられたネイチャー・ポジティブの実現に貢献していきます。
以上の考え方を踏まえ、2024年4月にベネッセグループ環境方針を改定し、生物多様性の回復・資源の保全への対応を明確にしています。
気候変動と密接な関係のある生物多様性への取り組みとして、2023年にはTNFD(自然関連財務情報開示タスクフォース)に賛同し、TNFDフォーラムに参画、TNFDアーリーアダプターに登録いたしました。ネイチャーポジティブの実現にむけて活動を年々進化させています。

TNFDに沿った情報開示詳細は以下をご参照ください。
情報開示要件(TNFD一般要求開示項目)
- ●マテリアリティへの適応
- :ベネッセグループのマテリアリティ、およびマテリアリティ策定プロセスにおける生物多様性の回復・資源の保全への対応は「持続可能な地球環境の保全」に含まれています。
- ●開示のスコープ
- :開示初年度として、ベネッセグループの中でも「国内教育(ベネッセコーポレーション)」に焦点を絞り、分析を行いました。国内教育事業に関する上流から下流のバリューチェーン全体を評価対象としています。
- ●自然関連の問題の場所
- :自社所有拠点および、サプライヤーの製紙工場・印刷所周辺の生物多様性のIBAT(Integrated Biodiversity Assessment Tool:生物多様性評価ツール)調査を実施しました。
- ※原材料の場所の特定については、自社のみへのサプライヤーの調達場所の特定は難しく、サプライヤー各社の全体での調達先の確認を実施しています。
- ●他のサステナビリティ関連開示との統合
- :サステナビリティ全般はサステナビリティサイトで情報開示をしており、特に事業に関連する内容は有価証券報告書でも開示。気候関連の情報開示はTCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)のフレームに沿って、国内教育領域、介護・保育領域ごとに分析し、開示しました。国内教育領域はTNFDの分析時にTCFD分析方法も参照しながら実施しています。
- ●考慮した時間軸
- :TNFDは2030年までを想定して分析を実施しています。
- ●組織の自然関連の問題の評価と特定における先住民や地域住民、影響をうけるステークホルダーとのエンゲージメント
- :地域・取引先・顧客・従業員などのステークホルダーとの環境コミュニケーションを年間を通してとっており、サプライヤーについてはアンケート調査も実施しています。
ガバナンス
以下の体制により、生物多様性をはじめとするサステナビリティ・ESGへの取り組みを推進しています。
- ●ベネッセホールディングス代表取締役社長 CEO
- :生物多様性をはじめとするESGについての最高責任者
- ●サステナビリティ推進委員会
- :委員会は、サステナビリティ担当執行役員を委員長とし、代表取締役社長CEO、CXO(各領域(X)における最高責任者、Chief X Officer)、カンパニー長・副カンパニー長(グループの事業責任者)、横断部門本部長を委員としたメンバーで構成されており、ベネッセグループのサステナビリティ活動を高めるための議論を行います(年数回/議事に応じて適宜開催)。
なお、委員会の活動については、取締役会による監督が適切に図られる体制となっており、委員会における審議事項は、定期的に経営会議および取締役会に付議・報告されます。なお、各開催回においては、上記メンバーに加えて、監査役、および委員長の指名者がオブザーバーとして参加することがあります。
サステナビリティ推進委員会の詳細については以下をご参照ください。
生物多様性の回復についての戦略
【国内教育領域(ベネッセコーポレーション)】
当社グループの主要子会社のひとつであるベネッセコーポレーションにおいて、LEAPアプローチ※に沿って分析を行い、生物多様性に関するリスクと機会による影響を把握して、これに基づき戦略および取り組みを策定、遂行しています。
※TNFDが開発、推奨する、自然との接点、自然との依存関係、インパクト、リスク、機会など、自然関連課題の評価のための統合的なアプローチ。スコーピングを経て、Locate(発見する)、Evaluate(診断する)、Assess(評価する)、Prepare(準備する)のステップを踏む。
LEAPアプローチにそった分析の概要
- ●自然資本とのかかわりの整理
- : 自然への依存、自然への影響の観点から分析を実施しました。
- ・バリューチェーン分析(※1)、ENCORE(※2)、High Impct Commodity List(※3)における重要資源の使用状況の確認を行い、事業と自然資本のかかわりを整理
- ・自然への影響度と使用する重量から、紙と鉱物資源をベネッセにとって焦点を当てる資源に特定
- ●サプライヤー調査
- :以下の取引先へアンケート調査を実施しました。
- ・製紙会社:自然資本を毀損する森林破壊・土地転換をしていないことを確認
- ・印刷・製本会社:製紙会社に比べると環境マネジメントを組み入れている会社は少ないが、インキや印刷方法を環境配慮型に切り替えつつあり、環境負荷は高くないことを確認
※自社への納品物に関するサプライヤー各社の工場の拠点についても、IBATでの調査を実施し、結果を各社へ提供
- ●自社拠点の調査
- :自社拠点すべてについてIBATでの調査を実施しました。
- ・自社拠点では基本的にオフィス活動が大半で、操業時の環境負荷は高くないことを確認
- ・岡山本社は保護地域内に自社施設を保有。一定程度、生物多様性への配慮が必要
- ※1 原材料の仕入れ・製造・出荷・販売やマーケティング・サービス提供・廃棄までの事業の工程ごとに分析をする手法
- ※2 Exploring Natural Capital Oppotunities, Risks and Exposures : 自然関連リスクへのエクスポージャー(曝露)を調査し、自然への依存と影響を理解するために、Global Canopy、UNEP FI(United Nations Environment Programme Finance Initiative 国連環境計画・金融イニシアティブ)、UNEP-WCMC(United Nations Environment Programme‐World Conservation Monitoring Center 国際連合環境計画‐世界自然保全モニタリングセンター)によって開発されたツール
- ※3 自然への影響が大きいとされるコモディティ(原材料)をリスト化したもので、SBTN(Science Based Targets Network : 科学に基づく自然関連目標ネットワーク)が開発したツール
リスクと機会の評価
LEAPアプローチにそった分析を行った結果、リスク・機会について、以下のとおり評価を実施しました。
- ●リスク
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- ・自然資本の毀損による風水害の甚大化を起因とするサプライチェーン・自社拠点への影響
- ・紙・鉱物資源などの仕入れ価格の変動
- ・プラスチック規制の強化
- ・配送料の高騰や再エネ切り替えでのコスト上昇
- ●機会
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- ・デジタル化による原材料使用の削減によるコスト削減
- ・BYOD(Bring Your Own Device:個人が私物として所有しているパソコンやスマートフォンを業務や学習に使う利用形態)化によるタブレット製造コストの削減と鉱物資源の価格変動リスクの回避
- ・ダイレクトメール発送量の低減による原材料使用とコストの削減
- ・環境教育機会増加に応じた売上増加
- ・環境負荷が低いブランドとしての認知度の向上
今後の戦略・取り組み
上記の検討をした結果、以下の戦略および取り組みを策定、推進します。
- ●資源の効率化
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- ・DXの推進
- ・タブレットのBYOD化の検討・実施
- ●サプライチェーンマネジメントでの自然資本への取り組み
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- ・環境方針策定や環境配慮型の印刷・インキ利用拡大など、製紙会社・印刷製本会社とのコミュニケーションの維持と、必要に応じて要請、協働の検討
- ●資源循環
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- ・教具・玩具のリサイクルの継続
- ・タブレットリユースの継続・拡大
- ・各拠点の廃棄物リサイクルの継続
- ●ステークホルダーとの協働
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- ・OECM(Other effective area-based conservation measures:保護地域以外で生物多様性保全に資する地域)可能性調査検討
- ・ネイチャーポジティブにつながる活動の探索
- ●環境教育
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- ・発達段階に応じた環境教育の機会の提供強化
生物多様性関連に関するリスク管理
ベネッセホールディングスは、当社グループ全体のリスクマネジメントおよびコンプライアンスの推進を目的として、リスク・コンプライアンス委員会を設置しています。委員長はリスクマネジメントおよびコンプライアンスを統括するCLRO(Chief Legal and Risk Officer)が務め、CEO、CXO、主要子会社であるベネッセコーポレーション社長、ベネッセスタイルケア社長およびこれらの会社の事業責任者等が参加しています。同委員会は、人財リスクや情報セキュリティ、BCPなどのサステナビリティ関連リスクを含む、グループ各社における各種リスク評価の結果を集約し、グループの横断的なリスクへの対策立案と推進管理を行い、その結果を定期的に取締役会に報告し、必要な指示を受けています。さらに、人権、環境に関しては、グループ各社における詳細なリスク評価をサステナビリティ推進委員会にて実施をしており、集約した評価に基づく対策立案と推進管理を進め、結果を取締役会に報告・提言しています。
また、主要子会社のひとつであるベネッセコーポレーションにおいては、ISO14001の認証を2004年より継続しており、そのプロセスの中でリスク管理をしています。具体的には、事業部ごとの顧客や事業ステージに沿って毎年各部計画を立案し、GHG排出量削減や生物多様性の回復を含む環境負荷削減と環境教育の推進を行っています。また全社員にむけてWEB環境研修を実施し、社員の意識向上も図っています。この活動の一環として、毎年社長へのマネジメントレビューも実施しております。
取り組み指標と目標
- ●森林破壊につながらない紙の調達
- :紙使用量削減、森林破壊につながらない紙の調達100%維持
- ●GHG排出量削減
- :「気候変動関連に関する指標および目標」に同じ
- ●資源の使用量削減
- :DXによる紙使用量の削減、タブレットのBYOD化の検討・実施
- ●環境負荷の低い印刷方法の採用
- :環境配慮型の印刷方法の拡大、環境配慮インク利用の拡大
- ●教材、教具等のリサイクル・リユース推進
- :教具・玩具の回収の継続、タブレットリユースの継続・拡大、各拠点の廃棄物のリサイクル継続
- ●事業所周辺地域の生物多様性向上のための活動の推進
- :OECM可能性調査など
- ●自然資本に関するサプライチェーン・マネジメントの推進
- :製紙会社、印刷製本会社とのコミュニケーションの維持と必要に応じて要請、協働の検討
- ●生物多様性を含む環境教育サービスの推進
- :提供コンテンツの拡充
実績
【国内教育領域(ベネッセコーポレーション)】
- ●森林破壊につながらない紙の調達
- :紙使用量削減、森林破壊につながらない紙の調達100%維持(2023年度)
主な取り組み
商品・サービスのデジタル化による紙資源の削減や、FSC認証の紙資源の調達、梱包材への古紙100%利用などのほか、リサイクル等による資源循環などにも取り組んでいます。
商品・サービスにおける取り組み
- ●<学習専用タブレット>のリユース促進
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ベネッセコーポレーションが提供している「進研ゼミ」でご活用いただいている<学習専用タブレット>は、リユース(再利用)を促進しています。
取り組みの詳細は以下をご覧ください。
- ●くるくるリサイクル
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<こどもちゃれんじ>の使い終わった教具をお持ちいただき、リサイクルしています。回収された玩具教材は油に再処理してエネルギーとして再利用しています。お子さまにとって楽しみながら環境について学ぶ機会にもなっています。
取り組みの詳細は以下をご覧ください。
- ●<たまひよの市販雑誌>のインク・用紙の環境配慮
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ベネッセコーポレーションが発行する、妊娠期・育児期向けの市販誌『初めてのたまごクラブ』『中期のたまごクラブ』『後期のたまごクラブ』『初めてのひよこクラブ』『中期のひよこクラブ』『後期のひよこクラブ』は、赤ちゃんの未来のために、環境に配慮したインク(植物油インキ)と用紙(FSC®認証の用紙)を(一部除く)使用しています。
取り組みの詳細は以下をご覧ください。
オフィスにおける取り組み
- ●廃棄物分別の徹底
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毎年、廃棄物の分別を徹底するために、四半期ごとに点検を実施しています。
結果をフロアごとに集約、社内ウェブで情報共有し、不備があるフロアは指摘を受けます。年間を通じて継続して働きかけを行い、例年、年度末にはほとんどのフロアが「指摘なし」になっています。また、意識喚起のための告知として、従業員および従業員のご家族を対象に、廃棄物処理を含む環境川柳の募集を行い、優秀作品を社内イントラサイトにて表彰発表するとともに、ポスターとして社内掲示しています。 - ●コピー用紙の削減
- 2005年より、1人当たりの毎月のコピー用紙使用量を指標にして削減活動をスタートしました。スタート時の2005年から比較すると6割以上減少しています。会議時のモニターやプロジェクターの活用、資料そのものの削減、両面や1枚に複数ページの印刷をする、などの努力を積み重ねています。
- ●アクリルパネルリサイクルなどの取り組み
- コロナ禍に飛沫防止パネルとして使ったものを、産業廃棄物として処理をするのではなく、リサイクル会社へ寄付を行い、リサイクル品として改めてアクリルパネルとして作り直し、再利用できるようにしました。
この他、使用期限の切れたヘルメットをリサイクルに出したり、オフィスで使用する事務用品のリユース活動なども行っています。
調達時の取り組み
ベネッセコーポレーションでは原材料調達において、グリーン調達に関する包括的なガイドラインを定めています。また、取引先と協働して環境への配慮を行っています。具体的には以下の活動などを実施しています。
- ◆紙および教具・玩具の原材料の調達基準、製造においては製品の安全基準を定め、特に環境影響のある素材の使用禁止を厳格に規定し、検査体制を整えて実行
- ◆持続可能な調達の一環として、用紙会社からは、すべてSGEC(Sustainable Green Ecosystem Council:緑の循環認証会議)森林認証※を受けた用紙を仕入れている。また、SGECの活動を通して、植林国に関する情報も収集している。
※SGEC森林認証は国際的な認証制度であるPEFC(Programme for the Endorsement of Forest Certification Schemes)森林認証と相互承認をしています。
- <ベネッセコーポレーションの商品安全の取り組み>
- 原材料把握の徹底
- 環境や人体によくない物質の制限
関連施設での取り組み
●ベネッセハウスのサステナビリティへの取り組み
ベネッセホールディングスと公益財団法人 福武財団は、現代アートや文化振興による「よい地域づくり」を推進。瀬戸内海の島々を舞台に「ベネッセアートサイト直島」と総称するアート活動を約30年にわたり展開しています。歴史や文化を活かし、新たに現代アートを持ち込みながら住民の方々との関わりを再生する活動が特徴的なベネッセアートサイト直島に毎年多くの方が訪問し、アート作品や瀬戸内の風景、地域の人々との触れ合いを通して「ベネッセ=よく生きる」を考える場所となっています。
ベネッセアートサイト直島にある「自然・建築・アートの共生」をコンセプトとした施設「ベネッセハウス」では、持続可能な社会の実現に貢献することを目指し、環境への配慮、健康・安全などの様々な項目においてサステナビリティを推進しています。
詳しい取り組みは以下よりご確認いただけます。

環境教育
詳細は以下よりご覧ください。

生物多様性に関するイニシアティブへの参加
自然関連財務情報開示タスクフォース(TNFD)に賛同し、TNFDフォーラム参画
ベネッセホールディングスは、自然資本および生物多様性の観点からの事業機会とリスクの情報開示を求める自然関連財務情報開示タスクフォース(TNFD)に賛同するとともに、賛同企業が自然資本に関してリスク管理と開示の枠組を構築するために設立されたTNFDフォーラムに参画しています。
TNFD提言に沿った開示を進める意向のある組織として、TNFDのWebサイトで「TNFDアーリーアダプター」に登録しました。登録状況は以下よりご確認いただけます。

ベネッセホールディングスは、「経団連生物多様性宣言イニシアチブ」に賛同し、生物多様性への取り組みを進めています。
※「経団連生物多様性宣言イニシアチブ」では、「経団連生物多様性宣言・行動指針(改定版)」が掲げる7項目のうち複数の項目に取り組む、または全体の趣旨に賛同する企業・団体のロゴマークや将来に向けた活動方針・活動事例を、特設ウェブサイト上で内外に向けて、発信・紹介しています。